2026/02/03 18:15
前回は、
「なぜ鶴田でスチューベンが広がり、日本最大産地になったのか」
という背景について書きました。
今回は、
そもそも——
スチューベンとは、どんなぶどうなのか。
どこから来て、どんな個性を持つ品種なのか。
その原点に迫っていきます。
スチューベンは“アメリカ生まれ”のぶどう
スチューベンは、
ヨーロッパ原産の伝統的なワイン用品種ではありません。
ルーツは、アメリカニューヨーク。
20世紀初頭に、
寒さに強いぶどうを目指して開発された
「ハイブリッド品種」です。
ヨーロッパ系ぶどうと、アメリカ系ぶどうを掛け合わせて生まれた、
寒冷地向けの品種。
つまり、最初から——
「冷涼な地域で育つために生まれたぶどう」だったのです。
この時点で、
津軽との相性は、ほぼ運命的だったとも言えます。
なぜ日本にスチューベンが入ってきたのか
スチューベンが日本に導入されたのは、戦後まもない頃。
当時の日本では、
・寒さに弱い欧州品種は育てにくい
・病気に強い品種が求められていた
・安定して収穫できることが最優先
という状況でした。
そこで注目されたのが、
寒さに強く、病気にも比較的強いスチューベンでした。
北海道、東北、北陸など、
冷涼地域を中心に導入が進み、
その中で、
最も定着し、育て続けられた場所が——
鶴田町だったのです。
スチューベンの本来の個性とは
スチューベンは、よく
「甘いぶどう」
「冬ぶどう」
として語られます。
もちろん、それも事実です。
しかし、本来のスチューベンの魅力は、
もっと奥にあります。
・果汁が非常に多い
・皮が薄く、雑味が出にくい
・酸が穏やか
・熟すほど香りが広がる
実は、かなり“液体向き”のぶどうです。
ジュースにも、ワインにも向く、
非常に珍しいタイプの品種と言えます。
にもかかわらず、
長い間、日本では「生食専用品種」として扱われてきました。
このことが、
スチューベンの可能性を狭めてきた一因でもあります。
「評価されてこなかった」ぶどうでもある
正直に言えば、
スチューベンはワイン業界では長く評価されてきませんでした。
理由は明確です。
・香りが弱いと思われていた
・高級品種と比べられてきた
・“ハイブリッド=安価”という偏見
こうしたイメージが、
先行していたからです。
しかし、実際に向き合うと分かります。
きちんと育て、
きちんと熟させ、
きちんと仕込めば——
スチューベンは、
非常に繊細で、やさしく、奥行きのある香りを持ちます。
問題は「品種」ではなく、
「扱い方」でした。
だから、津軽で挑戦する意味がある
私が津軽に来た理由のひとつは、
ここにあります。
冷涼で、成熟がゆっくり進む津軽。
この環境は、
スチューベンの香りを育てるのに、理想的です。
そして同時に、
ワイン用ぶどうにも大きな可能性がある土地でもあります。
スチューベンを守ること。
スチューベンを進化させること。
津軽から、新しいワインを生み出すこと。
それは、すべてつながっています。
「昔の品種」ではなく、「これからの品種」へ
スチューベンは、
50年の歴史を持つぶどうです。
しかし、
まだ“完成された品種”ではありません。
使い方次第で、
評価はこれからいくらでも変わる。
私はそう信じています。
過去に支えられてきたぶどうを、
未来につなぐ。
そのために、
ジュースも、ワインも、両方つくっています。
次回は「香り」に迫ります
次回は、
「スチューベンの香りは、なぜ独特なのか」
「なぜ津軽だと香りが出やすいのか」
について、掘り下げていきます。
このシリーズを通して、
スチューベンの“本当の姿”を、
少しずつ共有できたら嬉しいです。
