2026/02/09 00:27
前回は、
スチューベンという品種の「出自」と「本来の個性」について書きました。
今回は、
もう一歩踏み込んで——
なぜ、津軽のスチューベンは香りが出やすいのか。
なぜ、同じ品種でも場所でここまで違うのか。
その理由を、現場目線でお話しします。
「香りは、あとから作るもの」ではない
ワインやぶどうジュースの世界では、
よくこんな誤解があります。
「香りは、醸造で作るもの」
確かに、技術は重要です。
でも、本質はそこではありません。
香りの8割は、
ぶどう畑で決まります。
どんなに技術があっても、
原料に香りがなければ、引き出せません。
つまり——
香りは、畑で育てるものです。
津軽の気候が、香りを育てる
津軽は、ぶどう産地として見ると、
決して“楽な土地”ではありません。
・雪が多い
・昼夜の寒暖差が大きい
・秋は冷え込みが早い
一見、不利なこともあります。
でも、この環境こそが、
スチューベンの香りを育てます。
ゆっくり、ゆっくり熟すことで、
糖だけでなく、香り成分が蓄積される。
早く甘くなる土地では、
このプロセスが起きにくい。
津軽は、
「待てる土地」なのです。
土と水が、味の輪郭をつくる
津軽の畑の多くは、
火山灰を含んだ土壌です。
水はけがよく、
根が深く伸びる。
その結果——
ぶどうは、簡単に太れません。
楽をさせない分、
味と香りが締まります。
さらに、
地下水も豊富。
過不足のない水分が、
果実のバランスを整えてくれます。
派手ではないけれど、
「芯のある味」になる。
これが、津軽らしさです。
収穫の“1週間”で、香りは変わる
実は、
スチューベンはとても繊細な品種です。
収穫を1週間早めるか、遅らせるかで——
香りが別物になります。
・早すぎる → 平坦
・遅すぎる → 重たい
・ちょうどいい → 立体的
この「ちょうどいい」は、
毎年変わります。
だから私は、
糖度だけで決めません。
種、皮、香り、天気、気温。
全部を見て、決めます。
ここを外すと、
どんなに頑張っても取り戻せません。
香りを消さないための仕込み
せっかく育った香りも、
扱いを間違えると簡単に消えます。
・潰しすぎない
・酸化させない
・温度を上げすぎない
・余計な操作をしない
基本は、
「触りすぎないこと」。
スチューベンは、
優しく扱うほど、応えてくれます。
無理に作らない。
邪魔しない。
それが、いちばん香ります。
「香らない品種」ではなかった
たまに言われます。
「スチューベンって、香らないですよね?」
私は、そうは思いません。
正しく育てれば、
必ず香ります。
問題は——
香らない環境で育てられてきたこと。
香らない収穫をされてきたこと。
香りを消す仕込みをされてきたこと。
それだけです。
品種の問題ではありません。
ジュースも、ワインも、同じ考え方
私の商品は、
ぶどうジュースでも、ワインでも、考え方は同じです。
原料9割。
技術1割。
香りは、畑から始まっている。
だから私は、
まず畑に向き合います。
次回は「なぜ、この価格なのか」
次回は、
「なぜ、THREE FARMのぶどうジュースは安くないのか」
